登壇者のご紹介 その⑤


私が責任をもってご紹介します!(文責・金子稚子)

10月8日(金)・9日(土)に開催するACP(人生会議)に関するセミナー。「ACP(人生会議)に本当に必要なことって何だろう?」という問いに対して、さまざまな立場の方から話を伺います。

ここでは、セミナーをより深く楽しんで&学んでいただくために、登壇者をお一人ずつ紹介しています。

今回は、8日(金)19:00〜に登壇予定の石垣聡一朗さんをご紹介します。


石垣聡一朗さん(会社経営者、がん患者)

31歳、新婚でステージⅣのがんを宣告された

 

石垣聡一朗さんとの初対面は、まさに「人生会議」の場だったと言っていいかもしれません。細長いテーブルの向こう側には、石垣さんと奥様、ご両親がそろって私の方を向いておられ、正直なところ、皆さんの雰囲気に圧倒されそうになりました。

 

しかし、それも当然の話です。

約2年前の当時、まだ31歳。しかも結婚して1年と少しを過ぎたばかりの石垣さんは、ステージⅣの大腸がんを宣告され、治療がスタートした直後だったのです。

 

「ご主人の本(注・『僕の死に方〜エンディングダイアリー500日』金子哲雄著 小学館)を読んで、いろいろ参考にさせていただいています!治療については方針を決めていますが、それ以外ではいろいろ終活をしなければならないと考えておりまして」

 

私を信頼してくださり、相談したいと声をかけてくださった石垣さんのお話は、非常に理路整然としており、このような状況なのによく考え抜かれていると思いました。

しかし、私の席からは彼の横に座っている奥様やご両親の様子がよく見えます。石垣さんの話しぶりとは裏腹に、混乱、不安、困惑……そんな感情を抱いていることが伝わってきました。

石垣さんの気持ちや行動に、ご家族がついて行けていない……。率直に言ってそう感じました。そして、この人だったら受け止めてもらえるだろうと思い、思い切って石垣さんにこう問いかけたのです。

 

「あなたは、自分が死ぬための準備をしているのですか? ……私は『終活』とは、死ぬための準備ではないと思っています。少なくても亡くなった夫がしていたことは、死ぬための準備ではなかったんですよ」

 

この時から石垣さんとのお付き合いがスタートしました。

 

「最後もクスッとした笑いを提供できたらいいなと思ってます」

 

石垣さんは、お父様が理事長を務める医療法人のM&Aを成功させ、現在は関わる医療法人の経営に携わりながら、自身でも株式会社ベルを経営。ご自身の会社では、主としてM&Aや採用などを専門とするコンサルティングを行っています。

 

「自分はずっといじられキャラで生きてきました。自虐ネタが得意というか。だから笑いは自分のアイデンティティーだし、それは病気になっても変わらない。ユーモアを人に強いるつもりはないけれど、最後もクスッとした笑いを提供できたらいいなと思ってます。

 

それに、人間は致死率100%。200人いる中学・高校の同窓生のトップを走り抜き、最後まで『あいつらしかった』と言われたいですね。最初だからこそ、みんなの記憶に残るし、比較対象にもなる。要は、友人たちにうらやましがられたいんですよ(笑)」

 

石垣さんの『終活』は、彼のこんな生き方に裏打ちされています。

たとえば、詳細は明かせませんが、葬儀社との打ち合わせも爆笑の連続でした。仕事柄、笑顔は憚られる葬儀社の方も「お客様との打ち合わせで、こんなに笑ったのは初めてです。それに、こんな感じの打ち合わせも初めてです(笑)」と言っていたくらいです。

 

そんな石垣さんですが、闘病は決して楽なものではありません。14時間にも渡る手術、術後の激痛、副作用、人工肛門、排便障害、再発、肺転移、そして定期的な検査……。心身の苦痛はもちろん、命の終わりを強く意識せざるを得ない機会も健康な人よりはずっと多い日々を暮らしていると言っていいでしょう。

さらには、ステージⅣのがん患者と聞いて、面と向かって「あなたは終わった人だから」と言われたこともあります。

また、自分にもしものことがあったら……遺される奥様のことが何よりも心配ですし、親族のこと、仕事のことなど、さまざまな気がかりもあります。

 

「良くない未来の可能性を、少しでもつぶしておきたい」

 

初めてお会いした時、「治療については決めているが、それ以外ではいろいろしなければならないことがある」と言っていたように、33歳の今、彼の人生には実に多くの事柄や関わりがあり、文字通り、どれほどの大病であったとしても病気は人生の一部だと気づかされます。

それでも……、ここまで冷静に『終活』に取り組めるのはすごいことだと思います。なぜなのでしょうか?

 

「単純にビビリなんだと思います。自分がいないために起こるかもしれない良くない未来の可能性を、少しでもつぶしておきたい。それに、泣いたりわめいたり落ち込んだりして病気が治るのならいくらでもやりますが、泣いても落ち込んでも状況は変わらないですからね」

 

石垣さんは『終活』の一環として、自身の闘病にまつわるさまざまなことをブログに記録し、発信もしています。

 

「実はこのブログ、M&Aのコンサルティング事業の営業になればいいかなと思って書き始めたのですが、思いのほか闘病記として読んでくださるフォロワーさんがたくさんついてくださったんですよ(笑)」

 

さすが、返答でも笑いを提供してくれる石垣さんですが、もちろん、それだけではありません。

 

「こういう考え方のヤツもいるんだと、誰かの頭の片隅にでも残ってほしいと思っています。いつか、誰かの参考になれば……と」

 

石垣さんとは、これまでたくさんお話ししてきましたが、実は「ACP(人生会議)に本当に必要なことって何だろう?」というテーマについては、彼自身の話を深く聞いたことがありません。

当日は、直球で質問してみたいと思いますが、さて石垣さんはなんと答えてくれるでしょうか。でもおそらくは、笑いの絶えない時間になるのではないかと想像しています。

 

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