登壇者のご紹介 その④


私が責任をもってご紹介します!(文責・金子稚子)

10月8日(金)・9日(土)に開催するACP(人生会議)に関するセミナー。「ACP(人生会議)に本当に必要なことって何だろう?」という問いに対して、さまざまな立場の方から話を伺います。

ここでは、セミナーをより深く楽しんで&学んでいただくために、登壇者をお一人ずつ紹介しています。

今回は、9日(土)10:00〜に登壇予定の紅谷浩之さんをご紹介します。


紅谷浩之さん(医療法人社団オレンジ理事長、医師)

「足りないところがあるのなら、そこは僕、やりますよ」

 

医師の紅谷浩之さんとの出会いは、アドバンス・ケア・プランニング(愛称:人生会議)が盛り込まれることになったガイドラインの改訂(「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」、2018年)を行った厚生労働省の検討会でした。

 

それ以降も何度かご一緒する機会があり、またいろいろなお話を伺ったりするたびに、上から目線で恐縮ですが、紅谷さんの考え方や行動にいちいち感心することになりました。

 

紅谷さんは医師であり、福井市に本拠地を置く医療法人社団オレンジの理事長をしています。つまり医師であり、経営者なのですが、医師としてはもちろん、経営者としても非常に興味深いお仕事をしているのです。

在宅医療を提供するオレンジホームケアクリニック、地域で一般診療を行うつながるクリニック、昨年には軽井沢でほっちのロッヂと名付けられた、医療を中心としたさまざまな事業が複合的、且つシームレスにつながる新しい形のコミュニティを地域に創造し、運営しています。

 

紅谷さんを見ていると、医師と経営者が絶妙なバランスで統合されているように感じます。どのような考えで、またどのような立ち位置で活動しているのでしょうか?

 

「僕の場合は、『足りないところがあるのなら、そこは僕、やりますよ』という感じですね。地域のどこに何が足りないのか。その足りない部分を医師の立場で、できることをしてみよう、という発想ですね」

 

その発想は、都会ではなく地方にいるからこそのものだとも言います。

 

「病院も医者も足りないこと、地域の人はみんなわかっています。そこに困っていることがあるのに、自分に振り分けられた役割だけしかやりません、それは私の仕事ではありません、では回りません。『これが足りない。なぜ足りないのか!』と怒り主張することも大切だとは思いますが、譲り合ったり助け合ったり、時には妥協してもなんとかみんなで工夫を重ねて困りごとを解決する。その姿勢でずっときているだけだと思います」

 

Aタイプの医者とBタイプの医者がいる

 

病気がちで幼い頃から病院のお世話になっていたという紅谷さんは、すでに5歳の頃からお医者さんになりたいと言っていたそうです。そうして入った医大でも、もちろん目標は小児科医か町のお医者さん。しかし……。

 

「医大での環境は、自分が出会ったお医者さんたちの雰囲気とはあまりにも違っていました。このまま医者になっていいのか?と、正直、一番悩んでいた6年間だったかもしれません」

 

そう思いながらも、紅谷さんは何でも診られる医者になりたいと救急医療の分野に進みました。福井は救急搬送のたらい回しゼロで有名な地域。やりがいと熱意を持って救急医療に没頭しました。でも……。

 

「初期研修をしていた頃、医者には2種類のタイプがいることに気づきました。Aタイプが手術に集中する医者。Bタイプが手術後の生活や不安も気になる医者。この違いは何だろう?と思いながら、心の中で目の前の医者を分類していったんです。そうしたら、僕が出会った限りBタイプの医者は全員が地域医療に携わっていました」

 

どちらのタイプの医者が良いか悪いかということではありません。でも、このまま大学病院で研修をしていては、自分がなりたいBタイプの医者にはなれないと気づいた紅谷さんは、こうして地域医療、へき地医療に飛び込んでいったのです。

 

「とはいえ、最初はイライラしていました。2年半くらいはイライラの理由に気づかず、ずっといらついていたと思います。ある日、必要ないと言っているのに、どうしても抗生剤がほしいという患者さんがいました。看護師さんから言われて渋々処方したところ、後日、わざわざ診療所にやってきて『治ったよ、ありがとう』と言われて……。そうしてやっと気づいたのです。自分はいつの間にか、Aタイプの医者になっていた、と」

 

医学的には抗生剤は必要ありませんでした。でも、その患者さんは仕事もあるのに病気が治らなかったどうしようという不安を抱えていました。その人の不安に向き合う、という意味がこの時、わかったのです。

 

またある時は、90代の認知症の患者さんが心不全を起こしました。医師として紅谷さんは「今夜が山場です」と診断したところ、その方は朝になったら起き出して草むしりをしていた、ということもあったそうです。

 

「反省しました。人の命とは、こうして他人が簡単に決められるものではないと痛感しました。医師としての物差しで診るだけでは、人の命には向き合えないとわかったのです」

 

さて、こんな紅谷さんが考える「ACP(人生会議)に本当に必要なこと」とは、一体何でしょうか?

人の命に向き合うとは、どういうことなのでしょう。また「命」とは、一体何なのでしょうか?

当日、じっくりお話を伺えるのが楽しみです。

 

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