登壇者のご紹介 その③


私が責任をもってご紹介します!(文責・金子稚子)

10月8日(金)・9日(土)に開催するACP(人生会議)に関するセミナー。「ACP(人生会議)に本当に必要なことって何だろう?」という問いに対して、さまざまな立場の方から話を伺います。

ここでは、セミナーをより深く楽しんで&学んでいただくために、登壇者をお一人ずつ紹介しています。

今回は、9日(土)11:00〜に登壇予定の小島美保さんをご紹介します。


小島美保さん(名古屋掖済会病院 緩和ケア内科 医師)

「医学は人の根本を学べるもの。だから医師になった」

 

小島美保さんは、多くのフォロワーを抱える人気ブロガーとして「緩和ケア医Drこまち〜生きるをささえる〜」に日々、専門の緩和ケアはもちろん、人の生き死にに関わることについて、医師の目から見たさまざまなできごとや思いを綴られています。

 

医者が書いているからと言って、決して難しい内容というわけではなく、また上から目線でもなく、いたって平易な文章で、また時に、小島さんの心の内が飾らない言葉でストレートに綴られていることもあって、読者としては「生身のお医者さん」に出会ったような気持ちになるのではないでしょうか。患者さんで小島さんのブログをフォローしている人もきっと多いのだろうと想像します。

 

そんな小島さんに医者をめざした理由をお尋ねし、ちょっと驚きました。

 

「人間について知りたかったから」

 

え? 人間について知りたい!? そういう場合は、文学とか哲学とか、そういう分野の学問もあると思うのですが、なぜ医者に……。

 

「生物が好きだったのです。そこから人の発生について興味を持ちました。医学は人の根本を学べるもの。人を知るからこそ病気も治せますよね」

 

人が好きと、何度もはっきり言葉にする小島さんの話を伺っているうちに、肉体そっちのけでつい人の気持ちとか思いに偏りがちな自分に気づかされました。細胞レベルから考えても、人はもっと複雑で、豊かで、大きな存在ですよね。

 

父親と母親の命に向き合って

 

そんな小島さんでしたが、医師になって3年目に大きなできごとがありました。父親にステージⅣの胆管がんが見つかったのです。

 

「父の病気に対して、拒否する父親に頼み込んでまで抗がん剤治療をさせるなど、自分がやりたいようにやってしまいました」

 

医師という職業、「顔色が悪い」と気づいていたのに病気を見つけられなかったという思い……そんなことから若い医師の小島さんが、治療に懸命になったのも想像に難くありません。その後、お父様は亡くなられました。

 

そして医師になって15年目。認知症を患った母親を10年間在宅で介護し看取るという経験もしました。

 

「最期の方は母をうまく終わらせてあげたいという思いでした。でも、認知症の母が何をしたいのかがわからない。母だったらどうしたいのだろう?と考えました。母らしく、と」

 

「何よりも本人の意思を大切にしたい」

 

医師としてのキャリアを積み上げ、プライベートでもそんな経験を重ねた小島さんは今、言います。

 

「『家族が言うなら』と、自分ではなく家族の意見に従う人、日本人には多いですね」

 

さらに、

 

「本人ではなく、家族の意見の方を優先する医師もいます。しかも、若い先生がそれをする……」

 

そういう小島さんは、研修医だった頃にこんな経験をしていました。患者に対して、胃がんを胃潰瘍だと堂々と説明する主治医。その患者さんは主治医には言えなかったのでしょう。後から「お嬢ちゃん、俺ホントは胃潰瘍じゃないよね?」と小島さんに尋ねたそうです。

 

「だから私は、何よりも本人の意思、これを大切にしたいと思っています」

 

父親の治療に際し、父親の意思を無視して自分のしたいようにしてしまった後悔。認知症を患った母親の意思がわからなかった経験。そして、日々緩和医として接する患者さんやご家族への思い……。小島さんのこの言葉が身に沁みました。

 

「みんなフラット」とは何?

 

人を知りたいと医学の道に進んだ小島さんでも、病院でできることの限界を感じると言います。病院の中ではなくもっと違うところで、病気になってもならなくても、「死を知るべきではないか」という思いから始めたブログは、多くのフォロワーを集めるとともに、日々更新され続けています。

 

そんな小島さんに、「ACPに本当に必要なことって何でしょう?」と、フライングで尋ねてみました。

「みんなフラット」。そんなキーワードが出てきました。

 

「患者さんの周囲には、私のような医者を含め、さまざまな関わりを持つ人がいます。でも、医療については医師である私が責任を負っています。医療については意見が揺らぐことはあっても、判断を間違えてはいけないと思っています」

 

医療については重い責任を負うと言う小島さんが口にする「フラット」という言葉。これこそ、その語感とは裏腹に重い意味を感じます。

小島さんの言う「フラット」とはどんなものなのでしょうか。お話を伺うのが楽しみです。

 

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